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一時帰国時のバッテリー保守

一時帰国時のバッテリー保守

 

一時帰国後NZに戻ってきたらバッテリーが上がっていてエンジンがかからない!

長いフライトの後で疲れてるときに車が動かないのはホントキツイですよね。

なのでバッテリーが上がってしまわないようにお隣さんやフラットメイトに時々エンジンをかけてもらい、しばらくアイドリング(エンジンをかけたままにすること)させて定期的にバッテリーを回復充電するという手段がごく一般的に行われています。

ところがこれ、実はあまり有効な手段ではない場合があります。

セキュリティーアラームの有無、バッテリーの状態、不在の期間など、ケースバイケースではありますが、中途半端な時間エンジンをかける「だけ」ではむしろバッテリーを消耗させ、最悪の場合バッテリーを交換してもエンジン不調となるケースもあります。

問題となるのはバッテリーの「電力収支」と「エンジン内部の汚れの蓄積」です。

エンジンをしばらくアイドリングしておくと発電機(オルタネーター)が仕事をして確かにバッテリーは徐々に充電され回復していきます。ところがカーバッテリーは「電気を急には溜めれない」のです。

発電機が一生懸命電気を作り出してもバッテリーには電気がジワジワゆっくり溜まっていきます。カーバッテリーは電気を一気に出す能力は抜群だけど、「短時間に電気を受け入れることが極めて不得意」です。

それに、エンジン始動時には数秒間だけとはいえ、バッテリーの電気を大量に消費するので、特に「大きいエンジンの場合」には5分程度のアイドリングだと蓄電量収支はマイナスになりがち。すなわち短時間のアイドリングを繰り返しても電気は減る一方になってしまうことがあります。

エンジン始動で大量に消費された電力+放置期間にジワジワと放電した電力をアイドリングで十分に回復させるには、例えば20分以上、じっくりと時間をかける必要があります。放電が深い場合には1時間以上必要な場合もあります。

身近な人とはいえ毎週アイドリングを20分以上してもらうのはなかなか気が引けるのではないでしょうか。

幸いこの国の人たちは「20分以上?いいよ!心配しないで任せといて楽しんできてね!」と快く引き受けてくれるわけですが、アイドリングが長ければいいというわけでもないんです。

アイドリングによる充電では、車が移動しないのでバッテリー内の電解液の撹拌が積極的に行われません。

カーバッテリーは内部の電解液が撹拌されないと電気を溜めるために電極プレートで起こる化学変化が不均一となり、バッテリーの内部で電気が溜まっている部分と溜まっていない部分の差が大きくなって本来の能力を維持できなくなります。

この状態が続いたり繰り返されると、見かけ上充電されている電気を取り出す力が衰える上に、電解液の濃度のばらつきによって電極プレートが腐食します。専門用語になりますが「アシッドストラティフィケーション(Acid Stratification)」というカーバッテリーの不具合です。

これが起きるとバッテリーは大きなパワーを出せなくなり、ひいては十分に充電されているのにエンジン始動に必要なパワーが出せないことになります。そして最終的には電極プレートが腐食してどんなに充電しても元の力が出せない不良バッテリーとなってしまう場合があります。

新しいバッテリーでは起きにくいけれど、ある程度使い込まれたバッテリーではとても起こりやすい現象です。

さらに、長時間アイドリングするとエンジンのオーバーヒートを防ぐため冷却用の電動ファンが定期的に動き出します。

この冷却用のファンは比較的多くの電力を消費するので、アイドリング程度の低発電量下でファンが動いている間はバッテリーへの充電が消極的になりがち。多くのガソリン車は冷間始動後20分から30分アイドリングを続けるとエンジンの放熱を助けるためにファンが定期的に一定時間動くようになっています。

こういった理由で、長時間のアイドリングでもバッテリーへの充電量は時間に比例して多くなるわけではなく、短時間のアイドリングよりはマシ。という程度。

そしてさらに!

長時間のアイドリングには罠があります。

エンジン内部が顕著に汚れてしまうんです。

アイドリングはエンジンが止まらないようギリギリの条件で運転されている状態です。

エンジンにとっては本意ではない状況で致し方なくとにかくエンジンが止まらないようにしている状態がアイドリングと言っても差し支えありません。理想的に燃料を燃やせず、燃料を燃やす部屋(燃焼室)が燃え残りでススけやすくなります。

その上、エンジンが冷えているときは燃料が燃えにくく、それを補うために燃料の量を大幅に増やすように制御されます。つまり暖機が完了するまでの時間はなおさらススを発生させます。

走行せずアイドリングしかしないままエンジン止められちゃえば燃焼室はススで真っ黒な状態のまま停止することになります。

ガソリンエンジンにしろディーゼルエンジンにしろ、車のエンジンはある程度アクセルを深く踏んでエンジンの回転を上げ多少の負荷がある時(例えば高速走行中、強い加速中、坂道をグングン登るときなど)にエンジン内が綺麗になっていきますが、長いアイドリングや渋滞のノロノロ運転中、暖機の終わっていない冷間走行中には汚れが蓄積していきます。

5分10分程度のアイドリングをして十分に温まっていないエンジンを止める。

これはまさにバッテリーを中途半端に充電してエンジンが汚れきったところで止める。という行為になってしまうわけです。そしてこれを繰り返しやってしまうとエンジン始動困難になるほど調子が悪くなり、エンジンかかりにくいからエンジン始動によけい電気を使うという悪循環が始まります。

エンジンを時々かけてもらう「だけ」ではたいしてバッテリーは回復しないし、やり方によってはむしろ消耗してしまうし、その上エンジンにとっては決して好ましい方法ではないということなんですね。

じゃあどうすればいいのか?

クリアモータースが考えるいくつかの方法を次回の記事でまとめてみます。