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整備事例の紹介

整備事例の紹介

1 オイルシールからのオイル漏れ

ホンダアコードのタイミングベルト交換依頼時の状況です。

 

複数箇所からの同時多発オイル漏れ。通常見えない場所で、補機類のベルト3本、タイミングベルトカバー、タイミングベルトとバランスベルト、カムシャフトスプロケットとクランクシャフトスプロケットを外してから初めてアクセスできる箇所です。

この車両の場合、カムシャフト二本、クランクシャフト、バランスシャフト二本、つまりエンジンフロント部にあるシール類全てから漏れていました。

カムシャフトのオイルシール周辺。ベタベタジャリジャリ!

 

クランクシャフトのオイルシール周辺。ヌルヌルジャリジャリ!

 

オイルシールはエンジンの中から外に飛び出している回転系部品の回りからオイルや冷却水が漏れないように蓋をしている部品で、複数箇所に使われているのが普通です。柔軟性のあるゴム質のもので、高速回転する部品と常にこすれ合い、耐用期間の比較的長い消耗部品ではありますが、オーバーヒートしたときの熱や劣化したオイルにさらされると寿命が短くなり、同時に硬化とオイルスラッジの相乗作用で触れ合っている部品を深く削ってしまうこともあって、恒久的なオイル漏れにつながります。

 

こんな輪っかの部品がオイルシール

シャフトの周りに叩き込みます

 

盛大にオイルが漏れていたオイルポンプシャフトのオイルシールを外してみると、

 

硬化したオイルシールによってシャフトが削れくびれた状態になっていました。

なので隙間ができてオイルが漏れます。(トヨタ RAV4)

 

オイルシールは接するシャフト等への攻撃性がないように柔らかく包み込むような形や材質であるべき一方でオイルを通す隙間を許してはいけないという相反する特性も持たせなければならないので、微細な傷一つあってはならない繊細な部品です。

劣化したオイルを使い続けると柔軟性がなくなってしまい、カチカチで割れやすいプラスチックのようになって、ぜんぜん繊細じゃなくなります。

オイルシールはオイル漏れがなければ通常交換しませんが、漏れが見られる場合にはタイミングベルト交換の時に一緒に交換しておかないとオイル漏れの悪化だけでなく漏れたオイルがタイミングベルトを汚染して早期劣化につながります。

この車両は、タイミングベルトとバランスベルトの他、劣化したオイルシール4箇所とオイルポンプガスケット、オイルで汚染されてしまったウォーターポンプとテンショナーベアリング2つの交換、それから大々的なクリーニングが必要となりました。

 

2 オイル消費増加による点火不良

「時々エンジンの力がない+振動がする」という症状で入庫したトヨタヴィッツ。

スパークプラグ(エンジン内の燃焼を起こす火花を作る部品)を見てみたところ写真のような状態になってました。

白い堆積物がびっしり。モッサリカリカリ!

 

この状態でも辛うじて火花を飛ばせていたのがすごい、、、スパークプラグ頑張った!

 

正常なエンジンであればスパークプラグの耐用距離を超えたとしてもこんなふうにはなりません。電極が摩耗するだけです。

 

新品はこんな感じ

 

白い堆積物の正体はエンジンオイル由来の灰分(アッシュ)。

スパークプラグが入っている燃焼室内にはほとんどオイルが入り込まないようになっていますが、この車両はオイル管理が不十分だった時期があり、オイルが燃焼室に入り込んで燃料と一緒に燃えて排気される「オイル食い」を起こしています。

オイルが燃えてしまったとき残留するアッシュは、オイルの性能向上や中和などに必要なオイルに添加される塩基系金属元素類の燃え残りなのですが、その金属的な性質のためスパークプラグの平均温度(500~800℃)程度では燃え尽きることができないため、本来燃やす予定ではなかったオイルが燃えたときこのような副作用が現れます。

スパークプラグは燃焼室が適切な温度(500℃以上)になれば付いた汚れを焼き切ってクリーニングする自己清浄作用を持たせていますが、この能力はカーボン(スス)に対して有効だけど、アッシュには効きません。結果オイルが燃焼室内で「適切に」燃え続けるとアッシュばかりが残留することになります。

この車両は、

オイル管理が不十分だった時代がある→エンジン内が摩耗した→オイル食いが始まった→スパークプラグが汚染された→とうとう点火が弱くなってエンジンのパフォーマンスが下がってきた

という発展を遂げました。

根本原因であるオイル食いを止めるにはエンジンのオーバーホールか交換となるため現実的ではなく、オイル交換インターバルを短くしてこれ以上のオイル食い促進を予防、なおかつスパークプラグを指定の10万キロ持つ高価なイリジウムタイプのものではなく安価なスタンダードタイプに切り替えて、今後様子を見つつ2万キロ以内毎に交換するという対策となりました。

オイル管理大事です。

 

3 タイヤが変形

車が左に行こうとすることが前からあったけど、最近40~50km/hくらいになると振動も感じるようになったので診てほしい、で入庫の、、、すいません車種忘れちゃいました。トヨタイストだったかな?

テストドライブしてみると、敷地内を動かしてみただけでハンドルに違和感があり、すぐにリフトアップしてみたところ。

ワー!?

タイヤが変です!

 

これはヤバイ。スベスベグニャグニャ!一部ケバケバ!

 

フロントタイヤが左右ともセパレーションを起こしていました。

原因は空気圧不足で長いこと走ってしまったため、タイヤ内部の構造が剥離したり分断されるセパレーションという現象が促進されたようです。

タイヤの両サイドが真ん中に比べて極端に減っているのも空気圧不足によるタイヤ摩耗の典型です。

空気圧不足で長く走ってしまいダメージを受けた後に空気を入れてしばらく走ると、タイヤは膨らみを取り戻すも内圧に負けてトドメ刺されてしまうパターンが多いように感じます。

空気圧不足のまま走るとタイヤが過剰に変形して走るため、繰り返される変形とそれに伴う発熱でタイヤ内部が一気に疲労し、セパレーションに発展しやすくなります。この車両はタイヤ交換で事なきを得ましたが、セパレーションを起こしたタイヤは次の段階「バースト(破裂)」に発展します。

通常セパレーションが起きたら、この車両のように走行に伴う振動として症状が現れますので、変な振動感じたら、ほおっておかずにできるだけ早く対応してください。