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バッテリーについて

バッテリーについて

今回はエンジンの始動に不可欠なカーバッテリーについてのお話です。

ある日突然やってくるバッテリー上がり。一度ならず二度以上経験したことがある方も多いのではないでしょうか?

 

バッテリー上がりはNZではFlat Batteryと言われることが多いですが、正直最初はなんのことかわかりませんでした。フラット?バッテリーぺったんこ?タイヤぺったんこじゃなくて?

NZにきて間もないころはバッテリー上がりで助けを求めた時に「My battery is UP」と言って全く理解されなかった記憶もあります。そんな恥ずかしい話はおいといて本題です。

もともとカーバッテリーはスターティングバッテリーと呼ばれ、エンジン始動をするための電源として車に搭載されるようになりました。ところが現代ではヘッドライト、ワイパー、パワーウインドウ、セントラルロック、セキュリティーアラーム、ヒーターやエアコンのブロアファンやリアガラスの曇り止め、エアコンコンデンサを冷やすファン、ラジエターを冷やすファン、カーステレオ・ナビ、電動パワーステアリング、シートヒーター、エンジンやトランスミッション制御用コンピューター、ABSやトラクションコントロールなど安全装置、そして最近はスマートフォンやタブレットの充電など、車の装置は次々と電化され、なんでもかんでもバッテリーを電源として機能しています。

これではバッテリーが大忙しなのですが、しかし電化の進んだ車の方がバッテリーが早くダメになるということはないですよね?

車はエンジンが回っている間、エンジンの回転力を利用する発電機が電気を作り続けるので、エンジンが回ってさえいれば必要な電気需要をまかないつつ、余った電気でバッテリーを充電しながら動いています。

なので、過剰に電気を使っていない限りエンジンが回っている間はバッテリーは充電に専念し、走れば走るほど電気が貯まります。

車の使用頻度が十分にあり年間1万kmくらい走行する車であればバッテリーが電力不足になることはまずありません。そしてカーバッテリーは適切な温度範囲でめいいっぱい充電されている状態(100%満充電状態)をキープできていれば劣化しにくいように作られています。

逆に言えば、満充電状態をキープできない使い方をされていたり極端に高い温度で運用されているバッテリーは早期に劣化します。

カーバッテリーはスマートフォンやモバイルPCに使われている深い充放電サイクルが可能なリチウムイオンバッテリーとは性質が大きく異なり、蓄電量が70%以下にはならないように管理することが前提。減った分はできるだけ早く継ぎ足して、できる限り100%のまま運用することが想定されているバッテリーです。

スマートフォンのように毎日50%以下まで電池を減らすような使い方をすると著しく短命になります。

例えば、短距離しか使わない、車の長期不動、週末しか乗らないなど、車の使い方によっては満充電状態が保持できず、バッテリーの早期劣化につながります。

同じ車種、同じバッテリーでも車の使い方次第で1~2年足らずの短期間でバッテリー交換になることもあれば、5年以上使える場合もあり、バッテリーの寿命は車の使用頻度や一回に乗る距離によって大きく変わってきます。

また、ライトの消し忘れなどで一度でも深いバッテリー上がりを起こしなおかつその後しっかりと満充電されるまでの期間が長いと「ハードサルフェーション」という回復困難な現象がバッテリー内部で起きて、新品のバッテリーでも著しく劣化します。不注意によるバッテリー上がりになってしまった後はできるだけ早く十分な回復充電が必要です。

回復充電は家庭の電源からバッテリーを充電できる充電器で時間をかけてフルチャージすることが好ましいのですが、持っていない場合にはエアコンやライト等電力消費の大きい装置を使わずに、合計で少なくとも2時間以上車を走らせることである程度までは回復できます。

カーバッテリーは図体の割には気を使うものなんです。スマホやノートパソコン用のリチウムイオンバッテリーのように深く放電しても大丈夫な電池を車のバッテリーにしてしまえば平和になるんじゃないかと思いますよね?

ところが、止まっているエンジンを手で回してみたことがある方なら納得できるのですが、これが大変重いわけです。そしてエンジンは勢い良く回してあげないと始動できないのでエンジン始動には大きなモーター(スターターモーター)を使います。このモーターを元気よく動かすためには、数秒間だけとはいえ、100アンペアを超えるようなスーパー大電流が求められ、この大電流を配給するバッテリーとなると残念ながらリチウムイオンバッテリーでは危険かつ短命となってしまいます。その他にも安全に運用するには充電時間がかかりすぎることや圧倒的に熱に弱い、さらに爆発の危険性など、リチウムイオンバッテリーをカーバッテリーに代用できない理由はたくさんあります。

※2021年2月追記

熱安定性が高く変形/破損による発火がしにくいとされているLiFe(リン酸鉄リチウムイオン)を使ったリチウムイオンバッテリーが一部の2輪車用バッテリーとして使われ始めていたり、車用の標準規格鉛バッテリーの「安全な置き換え用バッテリー」として市場に出始めています。搭載車両の熱的条件や充電制御によっては性能が出せず、どの車にも適合するわけではないですが、LiFeリチウムイオンバッテリーという選択肢が今後増えていくように思います。

日々リチウムイオンバッテリーは進歩していますが、エンジンを始動するという点においてはその安定した瞬発力を持つカーバッテリーにどうしても軍配が上がるため、今もカーバッテリーは重たい鉛と希硫酸を使った、昔からあるいわゆる「鉛バッテリー」が主流です。

エンジンルームの灼熱の環境下で車の動きとともに左右上下前後に揺り動かされようが、零度以下でもエンジン始動するパワーを持ち、深い放電を避け充電量が100%近い状態を保ててさえいれば長く使えるわけですから、古い技術のままとはいえタフで優れたバッテリー。それがカーバッテリーなんですね。

次回はバッテリーや車の高性能化による副作用のお話をまとめていきます。