Clear Motors Ltd

エンジンオイルについて2

エンジンオイルについて2

前の記事から続きまして、今回はオイル交換時期と頻度の目安について。

オイル交換の時期は早ければ早いほどオイルへのストレスが少ないため、早いに越したことはないという結論になるのですが、じゃあ1000km走行毎に換えましょう。とはなりません。特別な事情がない限りそれでは手間もお金も大変です。今回はいろいろなケースから経験的に求められるオイルの限界時期を紹介しつつオイル交換時期の目安を探ってみます。

日本の自動車メーカーの多くはガソリンエンジンにおいて1万5千キロ毎または1年毎の交換を奨励しています。

ドイツメーカーにいたっては2万~3万キロ毎での交換の場合もあったりします。

ところがNZの多くの整備工場では1万キロ毎が標準。日本のオートバックスなど量販店では3千キロ毎と言われたりします。

Clear Motorsでは多くの場合5千キロ毎交換をおすすめしています。

はて、なにが正解?

トヨタは15000kmまたは12ヶ月毎の交換を奨励(トヨタ ヴィッツ)

 

まず自動車メーカーの使用説明書や指示書をよく読むと、実は1万5千キロ毎という交換時期はごく限られた使用条件を満たした車両においての目安です。

それはメーカー保証期間範囲にある比較的走行距離の少ない年式の新しいものであり、かつ「シビアコンディション」に当てはまらない使用条件を満たしている場合。

なお、シビアコンディションとは以下のような状況となっています。

 

悪路での走行が多い(ホコリの多い路面を含む)

雪道での走行が多い

山道、登坂走行が多い(高負荷での運転が多い)

外気温が低いところでの繰り返し走行が多い

低速走行が多い(30km/h以下)

短距離の繰り返し走行が多い(8km/回)

アイドリング状態が多い

 

例えば、

通勤で片道20キロ走るけど、毎朝渋滞にハマる→シビアコンディションです

信号で停まることが多い一般道が多く高速道路はあまり走らない→シビアコンディションです

荷物満載で走ることが多い→シビアコンディションです

主に子供の送り迎えと買い物に使うだけの短距離使用(ちょい乗り)→シビアコンディションです

家や勤務先がルーラルエリアで一部未舗装路がある→シビアコンディションです

冬は零下になるエリアに住んでます→冬だけシビアコンディションです

メンテナンスをあまりしてない10万キロを超えた車に乗ってます→シビアコンディションです

エンジン稼働率の少ないハイブリッド車です→使い方によってはシビアコンディションかも?(目下研究中です)

 

実は都市部に住むほとんどの人にとって車の使用状況はシビアコンディションになりがち。

総走行距離が10万キロ以下で今まで定期的に十分にメンテナンスされ、なおかつ温暖な気候の場所で荷物は少なく毎回走り始めたら8km以上は平均時速30km/h以上で無理なく走ることを繰り返した場合。において初めてメーカーの奨励する1万5千キロ毎オイル交換がギリギリ可能となります。NZは幸いにも温暖な気候で、大都市以外では渋滞もないのですが、近頃のオークランドではこの条件に当てはまる車両はなかなかありません。

トヨタはシビアコンディションの場合半分の7500キロ毎を、ターボチャージャー付きのエンジンでシビアコンディションに至っては2500キロ毎の交換を目安としています。(ターボチャージャーは高温になるためオイルの劣化が早く進みます)

では、トヨタの方針に従えば、たとえシビアコンディションだとしても自然吸気エンジンなら少なくとも7500キロ毎に換えればいいのではないか?

その通りです。ただしメーカー保証内の5年10万キロ以内で十分メンテナンスの行き届いた摩耗の少ないエンジンであればOKという条件が付きます。

NZで走っている車の多くは10万キロを超えたメーカー保証外の過走行車なので7500キロオイルがもつかと聞かれても整備工場の立場から大丈夫とは言えません。

事実7000キロオーバーで「ちゃんと」オイル交換をしている車両のエンジンがどんどん汚れていく現状を目の当たりにしていますし、過去にオイル交換を怠ったことのある車両はすでにエンジンの摩耗が進みオイルが5000キロもたないケースも多くあります。

BMWやメルセデスベンツなどドイツ車の一部はエンジンに入れておくオイルの量が多く、さらに化学合成油でロングライフの高価なオイルを入れることが前提で2~3万キロ毎交換とされています。そのようなロングランが可能なドイツ車は積算燃料噴射量などからのエンジンの負荷率や温度変化、エンジン稼働時間等を車両がモニタリングし、オイルの劣化を車両コンピューターで管理していて、交換時期をディスプレイに表示するシステムになってきています。最近ではオイルの量を見るためのオイルレベルスティックすら付いていおらず、メーター内の画面に「OIL OK」と出るだけだったりします。

ところが過去の事例から「OK」の表示にも関わらずオイルの状態が非常に悪かったり量が足りてなかったりするBMWを多く見ているため、Clear Motorsではドイツ車のオイル管理システムをまったく信用していません(笑)

またドイツ車の多くはリサイクルや環境問題的配慮からエンジン回りに樹脂の部品を多用していますが、オイル交換が間に合わず酸化が進むと真っ先に樹脂の部品が劣化します。その劣化具合たるやまるでアイスクリームのワッフルコーンのように脆くなり、摘むだけで崩れてしまったり、ひどい場合には粉々に砕け散って部品自体が消失していることすらあります。特にフォルクスワーゲンとアウディー(フォルクスワーゲングループ車)で顕著な症状です。

NZの多くの整備工場では1万キロ毎のオイル交換が標準的ですが、これは渋滞がなく毎日走る距離が長かった一昔前のNZの交通事情が基準となっていると考えています。渋滞や信号の多い現在の都市部では1万キロは持ちません。

1万キロ無交換でいても直ちにエンジンが壊れるという事態には発展しませんが、オイルは壊れます。そしてじわりじわりと確実にエンジンの寿命を縮めてしまいます。

6500キロ使ったオイルの色 (日産 ウイングロード)

11000キロ後のオイルフィルターの色比較(トヨタ ハイエース)

15500キロ後のオイルの色(トヨタ シエンタ)

オイル交換もフィルター交換も怠っていたため激しいオイル漏れを起こしたエンジンのフィルター(右)

汚れで閉塞してしまい油圧で変形している(オペル ベクトラ)

 

そんなわけでClear Motorsでは5000キロ毎のオイル交換を標準とすることが、オークランドエリアでの平均的な車にとって経済的にもちょうどバランスが良いと判断しています。

ただ、ケースバイケースでオイルの管理が自身でちゃんとできるお客様やオイルの量が多い車両、化学合成油を指定されるお客様、比較的新しい年式の車両や一日に走る距離が長い車両、5000キロ毎オイル交換時にオイルの状態が実際悪くない、などの場合は何が何でも5000キロ毎というわけではありません。あくまで「目安」です。

逆にすでにオイル消費が激しい車両、ターボ車やリーンバーン直噴エンジン搭載車など、オイルにとって過酷なエンジンが搭載されている車両の場合や、オイル交換が遅れに遅れ、エンジン内に汚れが蓄積してしまった車両には3000キロなど短いインターバルをアドバイスすることもあります。

オイルは車の血液といわれたりしていますが、健康であれば24時間常に浄化される血液と違いオイルは汚れたり劣化したら交換する以外に浄化する手段がなく、また病気になっても自己治癒できる人体と違って車は自然治癒できません。そのためオイル交換はエンジンを維持する上で避けては通れない最低限のメンテナンス項目です。